2017年7月の読書備忘録。

今月は5冊。

『作中に感情移入ができるかどうか』が重要なのを思い知る。

乙一 『失はれる物語』

殊能将之 『ハサミ男

伊坂幸太郎 『砂漠』

坂木司 『肉小説集』

角田光代 『彼女のこんだて帖』

乙一 『失はれる物語』

こないだの本話オフにてえっちゃんさんがかしてくれた。

初、白乙一(笑)の短編集。

まずはじめの『Calling you』からして、あの、懐かしい石田衣良さんの短編集にあったようなグッとくる感じ。『再生』とか『約束』とかが、ね。ややもすると、『1ポンドの悲しみ』とかもね。

懐かしいわ〜。

ちょっとファンタジー感が絶妙。

不思議な電話?の話あり、能力者の自己犠牲?を彷彿とさせる作品あり、物知りな白のブリーフ君の話もオチが心地よくいわゆる乙一というグロい作品のイメージが(笑)

とはいえ、ラスト前の『マリアの指』だけは意味がわからず(泣)投了。

ラストの『ウソカノ』。これ、面白かったわ。

いわゆる妄想の彼女がバレる??話なんやけど、嘘に嘘を重ねてバレないようつじつまを合わせてってところが何気に想像できていかにも(笑)

他の白乙一も読んでみたい。そう思わせる作品であった。

グロいのはごめんだが。

殊能将之 『ハサミ男

これも先日のオフ会から。えっちゃんさんがかしてくれた作品。

『わたし』は女性二人を首を絞めて殺害し、首にハサミを突き刺す。

新しいターゲットを調査。ハサミの先を研磨してアイスピック状にして、気をうかがっていた。

人気の無い公園にたどり着いたターゲットの女性。

しかし、すでにターゲットの女性は『首を締められ、首にハサミを突き立てられていた』。

しかし、『わたし』はやっていない。

マスコミでは『ハサミ男』としてセンセーショナルな報道合戦が起こっていた・・・。

表題は英語で『シザーマン』。

もしかして、『クロックタワー』??と思えば、そんな描写もあり。

コンピュータゲームという表記まで御丁寧に。

かしてもらったえっちゃんさんには申し訳ないけど、ワタクシにはあいませんでした。

まず、文体が合わない。

米澤穂信さんの『インシテミル』を彷彿とさせる、(特に)海外ミステリーを読んでいる人向けで、知ってる人はそれで盛り上がれるっていう、知らない人はほったらかしでポカーンっていう。

(後半になればなるほど顕著になる)

刑事に対して、『シャーロック・ホームズ位は読んでて当たり前だろう』的な。

コレだけではもちろん無いが。

上記の理由で、作中に感情移入ができない。

的確な場所で叙述が走るのだが、最近でなら、『闇に香る嘘』の様に『え〜!ここで!!』という衝撃が無い。作中に入っていけないから。『ああ、ここですか』とサラッと流れ落ちてゆく感じ。

ただ、序盤からマスコミのいい加減な憶測と警察発表の出し惜しみ(ある人物のも含む)から見事にミスリードされていきます。これが見事。

そこに来る、叙述は衝撃が大きいんだろうなあ。作中に感情移移入できていればの話だが。

何気に見たアメブロのレビューがめちゃくちゃ面白かった。

https://ameblo.jp/rsn48/entry-11897954259.html

(クリティカルなネタバレがあるので読まれた方のみ見て下さい)

あんまりミステリーに詳しくないワタクシですら、『そんな動機で??』とか、フラグ回収のイケてないところがチラホラあるけど、『騙された!!』ってな感情はしっかりと。

合わなかったんだけれど、色んな話がしたくなる、独特な作品。

けど、再読したいとは思わないが(笑)

伊坂幸太郎 『砂漠』

やっぱり、伊坂作品だった…

東堂さんに南さん、西嶋君に北村君という、いかにも麻雀の東南西北を彷彿とさせる大学生たちの4年間の春夏秋冬。ぶっ飛んだキャラの西嶋くんに翻弄されてゆくストーリー。

春は合コン。夏は海。秋は文化祭。冬はクリスマス。

英語では『a campus life』。なら、一体表題の『砂漠』とは何なの??

この表現も伊坂さんらしいなあと思う。読んでる作品の数が少ないのにもかかわらず、それがわかるくらい濃厚です。(石田衣良っぽいとも言えるが)

西嶋君のキャラがぶっ飛びすぎてついて行けない…(泣)

そして、いかにもな、『伊坂キャラ』がズラリと。

俯瞰視点の北村君だけは、『池袋〜』のマコトによ〜く似てるんやけど、まあ、この辺はどっちもどっちか。このころの石田衣良さんの作品だって今から思えば似たようなもんだ。

やっぱり、伊坂作品は合わないなあ…それを再認識。

ゴールデンスランバー』はここまで合わないって事無かったが。

音楽と海外作品に映画の知識をトリビア的にひけらかす件が非常に多く、全くわからないことだらけでポカーンとなるパターン多数。昔はこういうのなら、『おしゃれでカッコいい!』ってな感じだったのだろう。

ラモーンズの件も伊坂さんがお好きなのかな・・・

致命的なのはかの誰々は〜というような『引用』。伊坂作品お好きな方のサイトを見ればこれが『グッとくる言葉』なんだろうけど、こういう件に感情移入できないワタクシからすればただお寒いだけなのだが・・・。

さすがにこのあたりの描写は流し読み。それでも予想外に読み切るのに時間がかかった。

麻雀の件が非常に面白い(世界平和のために平和を和了すると言うネタはどうでもいいが)。

4枚麻雀での説明が意外にもわかりやすく、『ああ、こういう説明ならわかりやすい!』的な。

とはいえ、麻雀勝負ではないが

『倍プッシュ』あったり、

大負けしているところから能力者に代打ちさせたり、

『腕を斬られる〜』の件があったりと、これは本当に伊坂作品でしょうかね??

どうみても『アカギ』だろう(笑)

けど、一度は上がって言ってみたい、『面清、一通、自摸ドラ1。親倍!!』に『立直一発(即とも)、三暗刻、南、ドラ3で倍萬』(笑)

秋口の文化祭あたりからはこれぞ伊坂!と言うような何気ない描写がフラグになっていてそれがリンクしてゆくところが上手い。『ああ!これ、前にあったな・・・』というね。

坂木司 『肉小説集』

『和菓子のアン』でお馴染み(笑)

表紙のぶたの絵もなかなか面白い。

『肉』小説なのに、『豚』肉なのは地域がら?『肉』なら、『牛』だと思うのだが、と思ったら、あとがきでツッコまれた(笑)

お肉にまつわる、ライトな感じの短編集。

サクッと読めて、かつ、食べたくなってしまう(笑)

人生も後半戦にさしかかったリーマンの話がリアルでグッと来た。

ホルモンなんか噛み切れん場合もあったりで、『わかるわかる』ってな描写が多くて(笑)

後半戦にさしかかる直前に読んでおきたい作品があるのね。

『40〜翼ふたたび』

いや〜懐かしいわ♪

後は、ハムはハムでも生ハムのサンドを頂く話。

この話を読んだからこそ、その後すぐに『彼女のこんだて帖』を読みたくなったのだから、食べ物の描写とは恐ろしいもんだ。

角田光代 『彼女のこんだて帖』

『肉小説集』のあと、急に読みたくなった。

本棚をあさり、久しぶりの再読。

やっぱり、角田光代さんの最高(強?)傑作(笑)

コレ以上の作品に出会ったことが無い。

『今日も一日きみを見てた』

角田光代さんの飼いネコの話も大好きなのだが(笑)

長くつきあった彼と先ほど別れた。

私は、数年ぶりの独りの週末。

さみしいのはイヤだ。むしろ、祝福するべきだ。

そうなったら、『肉』だ!

彼女はネットショップでお肉を探し始める。

『泣きたい夜はラム』。

この主人公から登場人物が(同僚だったり、上司だったり等で)リンクしてゆく短編集。

息子と付き合い始めたという若い女性から突然の電話。彼が言う『かぼちゃのお宝料理』を教えて欲しいという・・・

ある理由で食べなくなった妹の事を同僚に相談したらピザを一緒につくってみろと言われ・・・

亡くなった妻の料理がふとした瞬間に食べたくなったが、それがなんなのかわからない・・・

都会に半ば強引に出てきた男女カップル。手元に残った3万円で松茸を買って最後の晩餐に・・・?

妻がストライキ!夕食を作ってくれなくなった!!要求は旅行かブランドバッグ。夫は・・・

これ以外にもあるのだが(笑)一話が10ページくらいの短編でサクッと読めてしまう。

いや、飯テロです(笑)

何気ない描写とメニューが結びつくあたり、本当に上手いです。

そして巻末のレシピ集及びあとがき。

本当に昔角田さんは偏食が酷かったようで、そのあたりの描写と料理が趣味となってゆく変わり様すらもあとがきに記されています。

作家業って、大変だ・・・